電気炉と燃焼炉の違いは?電気炉の仕組みや種類をわかりやすく解説

電気炉と燃焼炉は、どちらも金属をはじめ、さまざまな材料の熱処理に用いられる代表的な設備ですが、その仕組みやエネルギー源、適した用途には大きな違いがあります。環境への配慮や省エネ化が求められるなか、どちらを選ぶべきか悩まれている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、電気炉と燃焼炉の違いをはじめ、電気炉の仕組みや用途、種類などについて紹介します。設備導入を検討中の方や、炉の基礎知識を整理したい方にも役立つ内容です。

 

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電気炉とは

電気炉とは、電気エネルギーを熱に変えて材料を加熱・溶解・熱処理する炉のことです。おもに抵抗加熱や誘導加熱、アーク加熱などの方式があり、燃料使わずに1000℃を超える処理も可能です。

燃焼炉に比べて温度制御がしやすく、クリーンで安定した熱処理が可能なことから、精密な温度管理が求められる製造工程や環境負荷を低減したい現場で多く採用されています。

近年では脱炭素への意識の高まりを背景にガス炉や油炉から電気炉への切り替えを検討する企業も増えており、今後さらに注目が高まると考えられています。

 

燃焼炉との違い

電気炉と燃焼炉はどちらも工業加熱に用いられる代表的な炉ですが、エネルギーの使い方や加熱方式、用途には大きな違いがあります。ここでは、おもに4つの観点から違いを紹介します。

エネルギー源の違い

電気炉は、電気を使ってヒーターやコイルを加熱し、熱を発生させます。

燃焼炉は、都市ガスやLPG、重油などの燃料を燃焼させて熱を得ます。

エネルギー効率の違い

電気炉は、必要な部分を効率よく加熱できるため、熱ロスが少なくなります。

燃焼炉は、燃焼ガスとともに熱が外部に逃げやすく、効率面ではやや低下する傾向にあります。

加熱方式の違い

電気炉は、発熱体(鉄系、セラミックス系、カーボン系)や誘導コイルを使用します。

燃焼炉は、バーナーや燃焼室を使って直接または間接的に加熱します。

用途の違い

電気炉は、精密な温度管理が求められる熱処理やクリーン環境での加熱に適しています。

燃焼炉は、大量処理や高温加熱が必要な溶解・焼成工程で多く使われます。

 

比較項目 電気炉 燃焼炉
エネルギー源 電気 ガス・重油などの燃料
エネルギー効率 熱ロスが少なく、効率的に加熱できる 排熱が多く、やや低下傾向にある
おもな用途 精密な熱処理、研究開発、小~中規模の加熱 溶解、焼成、大量処理や高火力が必要な工程に適する
おもな加熱方式 抵抗加熱、誘導加熱、アーク加熱など 燃焼による直接加熱または間接加熱
加熱部分 発熱体(ニクロム、SiC、MoSi₂)、誘導コイル、黒鉛(カーボン)など バーナー(ガス/油)、燃焼室、リジェネバーナーなど
熱の伝達方法 輻射・対流による非接触加熱 炎や燃焼ガスによる直接/加熱管越しの間接加熱
温度制御 高精度な電流制御により安定した加熱が可能 空気比や燃料制御による調整(制御の難易度はやや高い)
メンテナンス性 ヒーター交換が定期的に必要だが、基本構成は比較的シンプルでメンテナンス作業がわかりやすい バーナー調整・清掃など燃焼部のメンテナンスが重要

 

 

電気炉の仕組み

電気炉は、電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、その熱で材料を加熱する仕組みです。加熱方式にはいくつか種類がありますが、基本的な構造は共通しており、「加熱部」「炉体」「制御系」などで構成されています。

ここでは、電気炉の代表的な仕組みと構造について紹介します。

電気炉の基本構造

電気炉は、金属製の筐体の内部に断熱層を組み込み、炉内の熱が外に逃げないよう設計された構造になっています。内部ではヒーターを用いて加熱を行い、温度センサーからの信号をもとに制御装置が出力を調整することで、設定温度と実際の温度が一致するように制御します。
このように電気炉は「断熱された炉体」「ヒーター」「センサー」「制御装置」などの要素で構成されており、安定した温度管理が可能です。
以下では、箱型電気炉を例に、その基本構造と加熱の仕組みについて紹介します。

 

  • 加熱部(ヒーターやコイル)
    電気を流して発熱する部分で、抵抗加熱式では発熱体(鉄系、セラミックス系、カーボン系)や誘導加熱式ではコイルを使用します。
  • 炉体(炉殻・断熱材)
    金属製の筐体の内部に断熱材を組み込み、必要な温度条件を維持しながら熱の損失を防ぎます。
  • 温度センサー(熱電対など)
    炉内温度を測定し、設定値と実際の温度を比較するためのセンサーです。
  • 制御装置(温度調節器・電源ユニット)
    センサーからの情報をもとに、加熱出力に対して安定した温度制御を行います。近年ではデジタル制御により細かな温度設定が可能です。

おもな加熱方式の分類

加熱方式 概要
抵抗加熱 発熱体に電流を流し、ジュール熱を利用して周囲を加熱する方式です
誘導加熱 コイルに交流電流を流し、電磁誘導によってワーク内部に発熱を生じさせる方式です
アーク加熱 電極間にアーク放電を発生させ、その熱で対象物を直接加熱する方式です

 

加熱方式によって適した用途や炉の構造は変わりますが、いずれも「電気を使って必要な熱を効率よく得る」ことが電気炉の基本的な特徴です。

 

電気炉の用途

電気炉は、精密な温度制御とクリーンな加熱環境が求められるさまざまな分野で活用されています。ここではおもな用途を「業種・産業」「対象材料」「製品例」の3つの視点から紹介します。

使用される業種・産業

  • 金属加工業(熱処理、溶解、焼鈍など)
  • 電子部品・半導体製造(雰囲気制御下での加熱や酸化防止処理)
  • 研究機関・大学(材料試験や実験用加熱装置)
  • セラミックス・ガラス製品製造(焼成やガラス軟化処理)
  • 医療機器分野(滅菌や特殊材料の加熱処理)

 

対象となる材料

  • 鉄鋼材料(炭素鋼、ステンレス鋼など)
  • 非鉄金属(アルミニウム、銅、チタンなど)
  • セラミックス・ガラス
  • 電子材料・磁性材料(フェライト、酸化物など)
  • 樹脂や複合材の一部(低温対応炉)

 

加熱される製品例

  • 機械部品(ギア、シャフト、金型など)の熱処理
  • アルミ製品の溶解や保持加熱
  • セラミックス基板や電子部品の焼成
  • 医療用部品や実験用試料の加熱処理
  • 小型バッチ処理品や試作部品

 

電気炉は、対象とする材料や工程に応じて構成や加熱方式を柔軟に選べるため、幅広い産業で使われています。特に温度分布の均一性や制御性の高さが求められる場面で、燃焼炉に代わって導入されるケースが増えています。

 

電気炉の用途

業種・産業 対象となる材料 加熱される製品・処理内容
金属加工業 鉄鋼(炭素鋼、ステンレス鋼など) ギア、シャフト、金型などの熱処理
非鉄金属加工 アルミニウム、銅、チタンなど 溶解、保持、時効処理など
電子部品・半導体製造 フェライト、酸化物、電子材料 セラミックス基板、電子部品の焼成
研究機関・大学 各種金属・合金、セラミックス、複合材 材料試験片、試作部品の加熱
セラミックス・ガラス製造 セラミックス、ガラス 焼成、軟化処理、加熱保持
医療機器分野 ステンレス、チタン、特殊合金など 滅菌処理、部品の熱処理
樹脂・複合材加工 一部熱硬化樹脂やCFRP(低温対応) 予備加熱、硬化、試験片の加熱

 

電気炉の種類

電気炉は、その使用目的や加熱対象に応じてさまざまな種類に分類されます。ここでは、代表的な分類方法として「加熱方式」「使用雰囲気」「炉の構造や操業方式」による違いを紹介します。

加熱方式による分類

種類 特徴・用途例
抵抗加熱炉 発熱体に電流を流してジュール熱で加熱します。構造が比較的シンプルで汎用性が高く、多くの産業で利用されています。
誘導加熱炉 コイルによる電磁誘導でワーク内部を加熱。非接触で急速加熱が可能で、金属の局所加熱や焼入れに適しています。
アーク炉 電極間のアーク放電を利用して高温で金属を溶解。鉄鋼や特殊金属の溶解に使われます。
真空加熱炉 真空中で加熱して酸化を防止。電子部品や特殊金属の精密な熱処理に利用されます。

雰囲気による分類

種類 特徴・用途例
大気炉 特別な雰囲気を用いず、大気中で加熱する方式です。酸化を気にしない材料に適しています。
不活性ガス雰囲気炉 窒素やアルゴンなどの不活性ガスで炉内を満たし、酸化を防ぎます。金属の焼結や精密部品の加熱に使用されます。
水素雰囲気炉 還元性の強い水素ガスを使い、酸化物の除去や光輝焼鈍に利用されます。
真空炉 酸化防止や脱ガス処理が可能で、真空浸炭や真空ろう付けなど真空環境ならではの熱処理に適しています。

炉型・操業方式による分類

炉型の分類

種類 特徴
箱型 直方体の汎用的な炉で、レイアウトが組みやすくインラインにも対応できます。ただし、大型化するとメンテナンスが難しくなる場合があります。
ピット型 上部から処理物を投入する竪型炉で、省スペース性に優れます。小物はバスケットに入れて、長尺物は吊り下げて搬入するなど、用途に応じた使い方ができます。
ベル型 被加熱物をセットした後、加熱装置付きの炉体を上から被せて加熱する構造です。間接加熱により、鋼板や鋼線コイルの焼なまし処理などに用いられます。
エレベーター型 処理物を上下に搬送する構造で、発熱体の配置に干渉しにくく、温度の均一性が高いのが特長です。大量生産に向いています。
るつぼ型 蓋付きの構造で炉内の保温性が高く、熱効率に優れています。形状は円筒型や角形などがあり、溶解や保持加熱に使用されます。
台車型 被加熱物を炉外でセットし、台車で炉内へ搬入するタイプです。段取りがしやすく、大型・重量物の処理に適しています。

 

操業方式の分類

操業方式 特徴
ローラーハース式 駆動式回転ローラーで被加熱物を搬送します。一定速度で移動するため、加熱ムラが少なく均一な処理が可能です。
回転レトルト式 被加熱物をレトルト(マッフル)に入れて回転させながら加熱します。粉粒体の処理に適しています。
プッシャー式 シリンダーなどの駆動装置でワークを押し出し搬送します。連続処理に向いていますがワーク同士が接触するため、製品形状や用途に制約があります。そのためトレーや治具に入れて処理することが多くなります。
ウォーキングビーム式 炉床が上下・前後に動いてワークを前進させる方式です。ガラス基板などキズに敏感な製品に適しています。
カテナリー式 被加熱物を炉床に触れさせず、宙吊り状態で搬送します。表面品質の高い製品向けの処理に使われます。
メッシュベルト式 耐熱金属製のベルトでワークを連続搬送します。小物や繊細な製品の処理に向いています。
チェーンコンベヤ式 チェーンリンク駆動による連続搬送方式で、大重量ワークの処理に適していますが、振動が大きいため製品のキズに注意が必要です。
台車式 ワークを台車にセットし炉内へ搬送します。処理後のワーク交換が容易で、段取り作業の効率化に寄与します。

 

電気炉の選定にあたっては、処理する材料や生産方式、必要な温度帯、雰囲気条件などを総合的に考慮することが重要です。目的に応じた種類を選ぶことで、加熱効率や品質の向上につながります。

なお、ここで紹介した多くの電気炉は、被加熱物の品質を損なわないよう間接加熱方式が採用されており、搬送についても台車やローラー、ベルトなど可動構造による運用が一般的です。こうした構造面も含めて、設備の特性を踏まえたうえで、自社に適した炉型・操業方式を選ぶことが大切です。

 

電気炉の仕様

電気炉を導入する際には、用途や生産条件に合わせて仕様を検討することが重要です。ここでは、代表的な仕様項目とその意味、検討時のポイントについて紹介します。

おもな仕様項目

仕様項目 内容とポイント
最高使用温度 仕様に示される最高使用温度は炉内で対応可能な上限温度を意味することが多いです。運転時はこの温度より低い範囲で運用されることが一般的です。
炉内寸法(有効寸法) ワークが実際に入る炉内スペースの大きさです。搬送方法や段取り性にも影響します。
雰囲気条件 大気/真空/不活性ガス/還元ガスなど。材料特性や処理目的に応じて選定します。
加熱方式 抵抗加熱(主に発熱体を用いた間接加熱)や、ワーク内部に発熱を生じさせる誘導加熱のほか、ラジアントチューブを介した間接加熱方式などがあります。精度・応答性・コストの観点で選定します。
温度分布精度 炉内の温度ムラの度合いを示します。高精度処理が必要な場合は±数℃以内の均一性が求められます。
制御方式 PID制御、プログラム温度制御、タッチパネル式など。操作性や自動運転機能も含めて確認します。
昇温速度/冷却方法 必要なサイクルタイムに応じて設定します。急速昇温や強制冷却の有無も検討項目です。
消費電力/電源仕様 導入にあたっての電力容量や工場インフラとの適合性を確認します。省エネ性能も比較ポイントになります。
安全機能 過熱防止、異常時シャットダウン、扉連動など。安全基準や運用体制に合わせて選定します。

 

このように、仕様の確認は単なる数値選定だけでなく、処理対象・生産性・コスト・保守性を含めた総合的な検討が必要です。導入前には、実際のワークや試験処理に基づいた評価もおすすめです。

電気炉のよくある質問

Q1:電気炉の寿命はどのように判断すればよいですか?

電気炉の寿命は使用頻度や温度条件にもよりますが、発熱体や断熱材の劣化具合が目安となります。ヒーターの断線や、断熱材のひび割れ・崩れが見られた場合は、部品交換や更新を検討する時期といえます。また、温度制御が不安定になってきた場合も、制御装置の経年劣化を疑う必要があります。

Q2:電気炉の消費電力を削減する方法を教えてください

消費電力を抑えるには、以下のような対策が有効です:

  • 断熱材の見直しによる放熱ロスの低減
  • 蓋や扉の開閉時間の短縮による熱保持
  • 処理サイクルの最適化による稼働効率の改善
  • 省エネ制御機能を持つ温度調節器の導入

また、長時間の加熱保持を行う場合は、断熱性能の高い炉体構造を採用することも効果的です。

Q3:熱処理の雰囲気ガスにはどのようなものがありますか?

使用する雰囲気ガスは、処理目的や材料に応じて異なります。代表的なものは以下の通りです:

ガス種別 特徴と用途例
大気 酸化を気にしない材料や工程に利用されます
窒素(N₂) 酸化防止のための不活性雰囲気として広く利用されます
アルゴン(Ar) 酸素や金属とはほとんど化学感応しないため、酸化しやすい材料や高精度処理に利用されます
水素(H₂) 還元雰囲気を形成し、光輝焼鈍や酸化スケール除去に利用されます

 

※水素や混合ガスを使用する場合は、安全性に十分配慮する必要があります。

 

まとめ

電気炉は、精密な温度制御とクリーンな加熱環境を実現できる装置として、さまざまな産業分野で活用されています。燃焼炉と比べて環境負荷が少なく、省エネ性や自動制御のしやすさに優れている点も大きな特長です。

本コラムでは、電気炉と燃焼炉の違いをはじめ、電気炉の仕組み、用途、種類、仕様などについて紹介しました。設備の導入や更新を検討する際には、処理内容や生産条件に応じて最適な炉型や加熱方式を選定することが重要です。

目的に合った電気炉を選ぶことで、加熱品質の向上はもちろん、エネルギーコストの削減や作業環境の改善にもつながります。ぜひ今回の内容を参考に、設備選定や見直しの一助としてご活用ください。

 

工業炉メーカー「サンファーネス」では、1,500台以上の工業炉製作で培ったノウハウで、お客様のご要望に合った熱処理炉のご提案をいたします。 技術的な相談も無料でお受けしますので、お気軽にご相談ください。

 

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著者 / サンファーネス編集部

1500台以上の工業炉の設計・製作を手掛け、自動車・鉄鋼・化学各種業界向けに展開。特定の炉に限定せず多品種の経験と実績を持つ。また、工業炉だけでなく付帯設備や搬送装置も含めてトータルでサポートし、仕様やニーズの異なる課題解決にも多数対応。

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