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抵抗加熱とは?誘導加熱、電磁波加熱との違いや仕組みを詳しく解説

電気加熱には誘導加熱や電磁波加熱などさまざまな方式がありますが、「抵抗加熱」はその中でも広く使われている代表的な方法のひとつです。
ジュールの法則に基づき電気抵抗体に電流を流すことで熱を発生させ、その熱をさまざまな加熱用途に活用します。工業炉のような製造設備はもちろん、家庭用の電気製品にも幅広く使われています。
この記事では抵抗加熱の基本的な仕組みや種類、ほかの電気加熱方式との違い、具体的な利用例などをわかりやすく解説します。
サンファーネスでは工業炉の開発提供メンテナンスをしています。お気軽にご相談ください。
目次
抵抗加熱とは
抵抗加熱の仕組みや種類、特長について解説します。
抵抗加熱の仕組み
抵抗加熱は電流が物体を流れるときに発生する熱(ジュール熱)を利用して、対象物を加熱する仕組みです。
電流が流れると電子が物体内部を移動する際に原子とぶつかり、その衝突によって摩擦のような現象が起こり、熱が発生します。
発生する熱の量は電流の大きさや物体の電気抵抗の大きさに比例します。
そのため、電気抵抗が大きい物質ほど多くの熱が発生しやすくなります。
このような仕組みによって発熱する抵抗加熱ですが、実際の装置ではどのような構成要素で成り立っているのでしょうか。次に代表的な構成や使われる材料について紹介します。
抵抗加熱に使われる主な構成要素
抵抗加熱装置は以下のような基本的な要素から構成されています。
| 構成要素 | 説明 |
|---|---|
| 電源装置 | 加熱体に電流を流すための電源。交流・直流いずれも使われ、出力制御機能を備えたものもある。 |
| 電気抵抗体(ヒーター、加熱体) | 電気抵抗により発熱する部品。代表的なものにニクロム、Fe-Cr-Al、セラミック、カーボンがある。 |
| 断熱材・炉体構造 | 発生した熱を効率的に使用するための断熱材や筐体。耐熱性・安全性の確保にも寄与する。 |
| 被加熱物(ワーク) | 実際に加熱される対象物。金属部品やセラミックスなど用途により多種多様。 |
| 温度制御機器 | 熱電対などを用いて加熱温度をモニタリングし、制御する。 |
直接通電加熱と間接抵抗加熱
抵抗加熱には電流をどこに流すかによって2つの方式に分類されます。
ひとつは被加熱物そのものに電流を流す方式(直接通電加熱)、もうひとつは加熱用の抵抗体を通じて熱を伝える方式(間接抵抗加熱)です。それぞれに特徴や適した用途があります。
直接通電加熱の特徴
□ 被加熱物そのものに電流を流して電子の運動によって物体内部で直接発熱させる。
□ エネルギー変換効率が高く、短時間で加熱できる。
□ 被加熱物自体にある程度の電気抵抗が必要なため、使用できる材料や形状に制限がある。
たとえば、鉄道のレール加熱や金属素材を高温にして成形する電気鍛造などは、直接通電加熱の実例です。いずれも被加熱物自体に電流を流して内部から発熱させるため、短時間で高温に達する効率的な加熱方法です。
間接抵抗加熱の特徴
□ ニクロム線などの加熱用抵抗体(ヒーター)に電流を流して発熱させ、その熱で被加熱物を温める。
□ 熱は輻射・対流・伝導を通じて対象物に伝わる。
□ 間に空気やすき間があると熱効率が下がることがある。
□ 多様な形状や材質のものに対応可能で、汎用性が高い。
たとえば、電気炉やホットプレートなどは間接抵抗加熱の代表例です。加熱用のヒーターから発生した熱を間接的に伝えることで、さまざまな材料や形状の物体に柔軟に対応できるのが特徴です。
抵抗加熱の原理とジュールの法則
抵抗加熱の基本原理となるのが「ジュールの法則」です。
この法則は1840年代にイギリスの物理学者ジェームズ・プレスコット・ジュールによって提唱されました。
ジュールの法則は「電流が抵抗体を流れるときに発生する熱量は、電流の2乗と抵抗の積に比例する」という関係を示しています。
この関係は以下の式で表されます:
| P = I² × R (P:発生する熱量[W(ワット)]、I:電流[A(アンペア)]、R:電気抵抗[Ω(オーム)]) |
この式からわかるように、抵抗体を流れる電流が大きいほど、また抵抗値が大きいほど多くの熱が発生することになります。
そのため、抵抗加熱はシンプルかつ効率的な加熱方式として工業炉などさまざまな分野で活用されています。
また、抵抗値Rは材料の特性や形状によっても変わります。
以下の式は抵抗値と寸法の関係を示しています:
| R = ρ × L ÷ S (ρ:電気抵抗率、L:抵抗体の長さ、S:断面積) |
つまり、長いほど抵抗は大きく、太いほど抵抗は小さくなるということになります。
この特性を踏まえて加熱の効率や温度制御に適した設計が行われています。
抵抗加熱の特徴
抵抗加熱には、加熱効率の高さや温度制御のしやすさなど、さまざまな特長があります。
また、排気ガスを出さず環境負荷が少ないことから、工業分野をはじめ医療機器や家庭用電気製品など幅広い分野で活用されています。
- 加熱効率が高い
ガスを燃焼させる加熱方式では、周囲の空気も加熱されるためエネルギーの一部が無駄になります。
一方、抵抗加熱(特に直接通電加熱)では、供給した電力の多くが被加熱物の加熱に使われるため効率が高くなります。
- 幅広い温度範囲に対応できる
加熱体に使用する材料(金属やセラミックなど)を選ぶことで、約50℃から3000℃までの幅広い温度設定が可能です。用途に応じて適切な加熱体を設計することで、多様なプロセスに対応できます。
- 環境への負荷が少ない
燃料の種類や燃焼条件によっては、大気汚染物質となるNOxやSOxが排出されることがあります。抵抗加熱では燃焼を伴わないため、排気ガスが発生せずクリーンな加熱が可能です
- 温度管理がしやすい
ガス加熱では火炎の調整や空気量の管理が必要ですが、抵抗加熱では電流や電圧を制御するだけで温度を調整できるため、制御性に優れています。
加熱の立ち上がりや冷却も制御しやすく、精密な加熱工程に適しています。
- 安全性が高い
ガスを使用する場合、不完全燃焼による一酸化炭素の発生やガス漏れによる爆発・火災のリスクがあります。
抵抗加熱は電気を使用するため、そのようなリスクが少なく安全に運用しやすい加熱方式です。
- 材料によっては適さない場合もある
抵抗加熱は導電性のある金属などに適していますが、絶縁性の高い材料(樹脂、ガラスなど)には直接加熱できない場合があります。
また、厚みがあるものや大きな表面積を持つ材料は、内部まで均一に加熱するのに時間がかかることもあります。
抵抗加熱の用途例と活用分野
抵抗加熱は、構造のシンプルさと安定した加熱性能により、さまざまな分野で活用されています。
以下に代表的な用途を紹介します。
- 加熱炉や乾燥炉の熱源
実験用の電気炉、工業炉などの内部ヒーターとして幅広く使用されており、一定の温度を安定して維持する用途に適しています。 - 樹脂加工(ノズルヒーターなど)
プラスチック成形機のノズルやシリンダー部分の加熱に使用され、樹脂を溶融状態に保つために重要な役割を果たします。 - 金属の予熱・熱処理
焼鈍や焼入れ前の予熱処理、あるいは小型部品の熱処理炉の熱源としても利用されています。 - 食品・医療機器・研究用途
滅菌装置や乾燥機器などにも抵抗加熱が用いられ、加熱精度が求められる分野でも活躍しています。
このように、抵抗加熱は汎用性が高く、家庭用から産業用まで幅広いシーンで採用されています。
抵抗加熱のメリットと注意点
抵抗加熱は、他の加熱方式と比較して以下のようなメリットがあります。
- 装置構成がシンプルで制御がしやすい
制御機器との相性が良く、温度調整も比較的容易です。 - 導入コストが比較的低い
初期費用やメンテナンス費用が抑えられるため、小規模な設備にも適しています。 - 局所的な加熱が可能
必要な箇所だけを加熱する「局所加熱」が比較的容易で、熱損失を抑えやすいという利点があります。ただし、材料の内部や特定の微細部位を高速で加熱する用途では、誘導加熱や電磁波加熱の方が適している場合があります。
このようなメリットがある一方で、注意すべき点もあります。
- 発熱体の劣化
金属発熱体は長時間の使用により酸化や断線などの劣化が起こるため、定期的な交換が必要です。 - 大面積や複雑形状の加熱には不向きな場合もある
均一な温度分布が求められる場面では、他の加熱方式の方が適していることもあります。 - 高温域での使用には材質の選定が重要
高温加熱には耐熱性の高い特殊合金(ニクロム、カンタルなど)の使用が必要となります。
用途や加熱対象に応じた装置設計・材料選定を行うことで、抵抗加熱の利点を最大限に活かすことができます。
抵抗加熱の発熱体の種類
抵抗加熱に使用される発熱体にはさまざまな種類があり、使用温度や加熱環境に応じて適切な材料が選ばれます。
ここでは、代表的な金属系・非金属系の発熱体について、その特徴や用途を一覧で紹介します。
◼ 金属系発熱体
| 材質 | 最高使用温度(目安) | 特徴・用途例 |
|---|---|---|
| ニクロム(Ni-Cr) | 約1150℃ | 耐酸化性が高く、加工性・安定性に優れた汎用材。家庭用ヒーターから工業炉まで幅広く使用される。 |
| 鉄-クロム-アルミ(Fe-Cr-Al) | 約1400~1500℃ | ニクロムより高温に対応。酸化雰囲気に強いが加工性はやや劣る。高温炉向き。 |
| モリブデン(Mo) | 約1900℃(真空中) | 酸化に弱いため真空または不活性雰囲気で使用。高温の金属熱処理や真空炉に利用される。 |
| タングステン(W) | 約2500~3000℃(真空中) | 非常に高温に対応。酸化に弱く、真空または不活性雰囲気で使用。電子部品や高温炉に使用。 |
| 白金(Pt)系 | 約1700℃ | 安定性が非常に高いが高価。分析装置など高精度用途で使用。 |
◼ 非金属系(セラミック・炭素系)発熱体
| 材質 | 最高使用温度(目安) | 特徴・用途例 |
|---|---|---|
| 黒鉛 (グラファイト) |
約2500~3000℃(真空・不活性雰囲気) | 非常に高温まで使用可能。真空・不活性雰囲気下の加熱に適す。真空炉、焼結炉など。 |
| カーボン | ~約2000℃(真空・不活性雰囲気) | コストが低く成形性が高い。中高温の加熱体や断熱材として使われる。酸化に弱い。 |
| 炭化ケイ素(SiC) | 約1600~1700℃ | 耐酸化性・耐食性に優れ、空気中でも使用可能。工業炉に多用される。 |
| モリブデンジリコン(MoSi₂) | 約1800℃ | 酸化雰囲気にも強く、超高温に対応。セラミック焼成炉や金属熱処理炉に使用される。 |
| その他セラミック系 | ~1200℃前後 | 電気絶縁性や化学安定性が高く、補助加熱体や断熱材として使用される。 |
このように、発熱体の材質によって対応できる温度や雰囲気、適した用途が異なります。
加熱の目的や使用環境に応じて、最適な発熱体を選定することが重要です。
誘導加熱、電磁波加熱との違い
抵抗加熱と似ている加熱方法である誘導加熱と電磁波加熱について紹介します。
誘導加熱とは
誘導加熱は、電磁誘導の原理を利用して金属を加熱する方法です。
1831年、イギリスの科学者マイケル・ファラデーによって発見された現象に基づいており、現在では多くの製品や工業プロセスに利用されています。
コイルに高周波の交流電流を流すと、その周囲に磁界が発生します。
この磁界がコイル内に置かれた金属にうず電流(誘導電流)を発生させ、金属内部で抵抗加熱が生じることで加熱されます。
産業用では金属のろう付け、焼入れ、溶解加熱などに、家庭用ではIHクッキングヒーターや炊飯器などで広く活用されています。
電磁波加熱とは
電磁波加熱は、高周波電磁波(マイクロ波やラジオ波など)を照射することで、被加熱物内部の分子を振動させ、その摩擦熱で加熱する方法です。
電子レンジが代表的な例で、食品に含まれる水分子を振動させて加熱します。
電磁波加熱は、金属に限らずプラスチックや木材、ゴムなどの非金属材料にも対応可能であり、食品、医療、農業、産業分野などで幅広く利用されています。
抵抗加熱との違い
| 加熱方式 | 原理 | 使われる物理現象 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 抵抗加熱 | 被加熱物に直接電流を流し、抵抗で発熱 | ジュール熱 | 構造がシンプルで制御しやすい |
| 誘導加熱 | コイルの磁界によるうず電流で金属内部を加熱 | 電磁誘導 + ジュール熱 | 金属を非接触で加熱、高速で局所加熱が可能 |
| 電磁波加熱 | 高周波電磁波で分子を振動させて加熱 | 分子運動(誘電加熱・マイクロ波加熱) | 非金属の加熱が得意、加熱対象が広い |
抵抗加熱・誘導加熱・電磁波加熱はいずれも電気エネルギーを使った加熱方式ですが、加熱の原理や対象物の違いにより適した用途が異なります。
それぞれの特徴を理解することで、目的に応じた最適な加熱方法を選ぶことができます。
誘導加熱・電磁波加熱との使い分けのポイント
加熱方式にはさまざまな種類があり、それぞれの特性を理解して適切に使い分けることが重要です。抵抗加熱は装置構成がシンプルで制御がしやすく、初期導入コストや運用コストを抑えられる点が特徴です。一方、高速加熱や部分加熱を必要とする場面では他方式が有利となります。
誘導加熱は金属を非接触で内部から加熱するのに適しており、電磁波加熱(マイクロ波加熱)は主に食品や水分を含む物質の内部加熱に用いられます。
以下に、各加熱方式の特徴や使い分けのポイントをまとめます。
| 加熱方式 | 特徴 | 主な用途例 | 適している材料・対象 |
|---|---|---|---|
| 抵抗加熱 | 装置構成がシンプルで制御がしやすい | 熱処理炉、焼入れ(広範囲・複数同時処理)、トースター、電気メスなど | 金属、空気、水など比較的導電性が高いもの |
| 誘導加熱 | 非接触で金属内部を迅速に加熱できる | 部分焼入れ(高速・局所処理)、金属溶解、加熱コイルなど | 導電性のある金属(鉄・銅など) |
| 電磁波加熱 | 分子振動で内部から直接加熱 | 電子レンジ、乾燥装置、医療機器など | 水分を含む食品、セラミックス、樹脂など |
よくある質問
Q:抵抗加熱はどんな材料に使えますか?
抵抗加熱はおもに金属や一部の導電性材料の加熱に使われます。
金属は電流を通す性質があるため、発熱体としても被加熱物としても適しているのが特徴です。
一方で、ガラスやセラミックス、プラスチックなどの非導電性材料を加熱する場合は、間接加熱の方式(間接通電や炉内加熱など)で使用されます。
Q: 抵抗加熱は家庭用にも使われていますか?
抵抗加熱は身近な家電製品にも数多く使われています。
たとえば、電気ストーブ・炊飯器・トースター・電気コンロなどは、発熱体を使って物体を加熱する抵抗加熱の原理を応用した製品です。
産業用だけでなく、家庭にも広く浸透している加熱方式です。
Q:抵抗加熱はエネルギー効率が良いですか?
抵抗加熱は電気エネルギーを熱エネルギーに直接変換するため、変換効率自体は非常に高い(90%以上)とされています。
ただし、加熱対象や装置の断熱性、発熱体の寿命、加熱時間の長さなどによって、実際の運用効率には差が出ます。
用途に応じた選定と制御設計が効率的な運用のポイントになります。
まとめ
抵抗加熱はジュールの法則に基づいており、被加熱物を通電したときに抵抗で発生する熱エネルギーで加熱する方法です。
産業用、医療用、家庭用など幅広い製品で利用されていて、特に自動車関連などで使われる工業炉で頻繁に見られます。
例えば、熱処理炉は金属の強度や摩耗性、加工性などを製品ごとに必要な特性を持たせるために使われていますが、抵抗加熱により炉内温度をコントロールしています。
その際の温度管理が製品の品質に大きく影響するため、初期の設計構想や事前の検討が重要となります。
近年は抵抗加熱装置にもIoTやセンサー技術を活用した「スマート加熱制御」の導入が進んでいます。例えば、ヒーターの表面温度を常時モニタリングし、PID制御で最適な電流量を自動調整するシステムなどが登場しています。これによりエネルギーロスを最小限に抑え、省エネや品質安定につなげる取り組みが行われています。
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