11:バルブの種類と使い分け|シート材質の選定と【水素ガス】調達のリアル

配管設計ではバルブの種類(構造)やシート材質の選定が必要になります。さらに水素ガスを扱う場合は仕様だけでなく調達性や納期も設計時に確認したい要素です。本記事ではバルブの種類と使い分け、シート材質の選定、水素ガス用バルブの選定・調達上の注意点を紹介します。

用語ミニ解説 グローブ弁(玉形弁):流路がS字状に曲がり弁体を押し付けて流量を絞るバルブのこと。流量調整に向く
ゲート弁(仕切弁) :板状の弁体を上下させて流路を全開・全閉するバルブのこと。元弁に向く
ボール弁       :穴のあいた球状の弁体を90°回転させて開閉するバルブのこと。素早いオンオフに向く
ニードル弁      :針状の弁体で微少流量を精密に調整するバルブのこと
シート(弁座)   :バルブを閉じたときに流体を止める接触面のこと。金属製のメタルシートと樹脂・ゴム製のソフトシートがある
水素脆化       :金属が水素を吸収し、もろくなる現象のこと
 
 
 

1. 主要バルブ4種類の構造と使い分け

Point!バルブは流量調整向きか全開・全閉向きかで使い分けます
 

▲ 主要バルブ4種類の構造と使い分けの概念図

① グローブ弁(玉形弁)【流量調整】

  • 構造:内部の流路がS字状に曲がり、上から弁体を押し付けて流路を絞る
  • 特徴:流量を細かく調整しやすい。一方で流路が曲がるため圧力損失は大きくなりやすい
  • おもな用途:冷却水や雰囲気ガスの手動流量調整ライン

② ゲート弁(仕切弁)【全開・全閉(主弁)】

  • 構造:板状の弁体(ゲート)を上下させて流路を開閉する
  • 特徴:全開時は流路が比較的まっすぐになり、圧力損失が小さい。中間開度で使うと弁体が振動したり摩耗したりする場合がある
  • おもな用途:配管根元の元弁(主弁)、メンテナンス時に系統を切り離すバルブ
注意ゲート弁は全開・全閉で使うバルブです。流量調整に使うと中間開度で弁体が振動し、摩耗や不具合につながる場合があります

③ ボール弁【素早いオンオフ】

  • 構造:穴の開いた球状の弁体のレバーを90°回して全開・全閉する
  • 特徴:全開時の圧力損失が小さく素早く開閉しやすい。細かな流量調整にはあまり向かない
  • おもな用途:
  • パージガス(窒素)の一気投入、緊急遮断ライン

④ ニードル弁【微少流量の精密調整】

  • 構造:弁体の先端が針状または円錐状になっている
  • 特徴:微少流量を細かく調整しやすい。ハンドルを複数回転させながら少量のガスを段階的に調整できる
  • おもな用途:
  • 分析計(露点計など)へ送るサンプリングガスの微量調整

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2. シート(弁座)材質の選び方

Point!ソフトシート(樹脂・ゴム)は気密性を取りやすいが高温に弱い
メタルシート(金属)は高温に強いが微少漏れを見込んで選定します
 

▲ ソフトシートとメタルシートの特性比較の概念図

シートの種類 代表材質 メリット 使い分け
ソフトシート(樹脂・ゴム) PTFE(テフロン)、フッ素ゴム(FKM)など 密着性が高く気体でも漏れゼロにしやすい。ただし熱に弱い(一般に200℃以下、PTFEは条件により上も) 常温の雰囲気ガス・空気・冷却水の確実な遮断
メタルシート(金属) SUS304、SUS316、ステライト盛金など 高温の炉気(排ガス)に直接触れても溶けない。ただしミクロな隙間から微少漏れが出ることがある 炉体直近の排ガスライン、熱交換器周辺の高温配管

 

水素ガスや雰囲気ガスの配管では圧力条件や流量単位の確認も重要です。ゲージ圧と絶対圧、単位換算の考え方については、気体の圧力と単位換算の記事でも紹介しています。

豆知識|水素は分子が小さく、漏れやすい気体 水素ガスは分子が小さく、軽い気体です。そのため、条件によっては金属や樹脂の内部へ入り込み、じわじわと反対側へ抜けていくことがあります。目に見えるすき間がなくても油断できない少し厄介な気体です。水素用のバルブ選びでは、開閉性能だけでなくシート材質やシール構造による漏れにくさが重要になります
 
 

3. 水素ガス用バルブ選定【実務のリアル】「水素ガス用」汎用バルブの事情

Point!水素ガス用バルブは、材質・接続・シール構造の指定が重要です
汎用品では選択肢が限られる場合があり、近年は水素対応品も増えています
 

光輝焼鈍炉などで使う水素ガス(H₂)の配管設計では、カタログ上で明確に水素ガス用と保証された汎用バルブが見つけにくい、という課題が出ることがあります。

水素は分子が非常に小さく軽い気体です。そのため、わずかな隙間から漏れやすく条件によっては材料中を透過することもあります。さらに、金属をもろくする水素脆化や小さなエネルギーでも着火・爆発し得る危険性があります。こうした理由から、メーカーが汎用品に対して水素ガス用の保証を付けにくい場合があります。

 
ミニ解説:水素対応品は増えている近年は水素エネルギーの普及に伴い、水素対応をうたうバルブ・継手や、高圧水素向けの製品・規格が整備されつつあります。一方で、水素対応品であっても使用できる圧力・温度・接続方式・適用規格は製品ごとに異なります。採用時には各メーカーの最新資料で水素対応の範囲と適用条件を確認したうえで選定します
 
実務では、設計者が次の項目を明確に指定します。

▲ 水素ガス用バルブで設計者が指定する3要素の概念図

  • 本体材質:

    水素脆化の影響を考慮し、SUS316/SUS316Lなどの水素環境で実績のある材質を検討する。SUS304は条件によって影響を受ける場合があるため、圧力・温度・適用規格に照らして採用可否を確認する

  • シート・パッキン:

    気密性、耐水素性、使用温度を確認し、PTFEなどの樹脂系材料やメタルシートを用途に応じて選定する

  • 接続方法:

    ねじ込み接続は漏れ管理が難しくなる場合があるため、圧力・漏れ基準・メンテナンス性に応じて溶接接続、フランジ接続、ダブルフェルール継手などを選定する

安全注記水素は、漏れ・滞留・着火のリスクが大きいガスです
バルブ単体の仕様だけで安全を判断せず、漏れ検知、換気、着火源管理、パージ手順を含めて設備全体で安全設計を行う必要があります
 
雰囲気ガスの種類によって断熱材の実効熱伝導率が変わる場合があります。炉内雰囲気と断熱計算の関係については、雰囲気ガス中での熱伝導率補正の記事でも紹介しています。
 
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ひといきメモ|テフロンは偶然から生まれたバルブの気密を支えるPTFE(テフロン)は、冷媒用ガスの研究中に偶然見つかった材料です。ある朝、ガスボンベのバルブを開けても中身が出てこなかったため、ボンベを調べたところ、内部で白い固体に変わっていたといわれています。これが、摩擦や薬品に強いPTFEの発見につながりました。狙って作られたわけではない材料がいまではバルブやシール材など現場の見えないところを支えています
 
 

4.よくある質問

業界や用途によって答えが異なる場合もありますが、工業炉まわりの配管設計でバルブを選定する際によく確認されるポイントを紹介します。

Q1:グローブ弁、ゲート弁、ボール弁、ニードル弁はどのように使い分ければよいですか

流量調整をしたい場合はグローブ弁やニードル弁、全開・全閉で使いたい場合はゲート弁やボール弁が候補になります。グローブ弁は流量調整に向きますが、圧力損失が大きくなります。ゲート弁は全開時の圧力損失が小さい一方、中間開度での流量調整には向きません。ボール弁は素早い開閉に向き、ニードル弁は微少流量の調整に向きます。バルブは配管径だけでなく、操作目的と流体条件に合わせて選ぶことが重要です。

Q2:ソフトシートとメタルシートは、どのように選べばよいですか

常温付近のガスや冷却水を確実に止めたい場合は、PTFEやフッ素ゴムなどのソフトシートが使われることがあります。密着性が高く、気体の遮断に向いています。一方、炉体近くの排ガスラインや加熱された配管では、樹脂・ゴム系シートが使えない場合があるため、メタルシートを検討します。メタルシートは熱には強い一方、完全なゼロリークを前提にしにくいため、許容漏れ量や使用条件を確認する必要があります。

Q3:水素ガス用のバルブを選ぶときは、何を確認すべきですか

水素ガスでは、漏れやすさ、着火リスク、水素脆化、接続部からの微小漏れを考慮する必要があります。バルブ本体やシート・パッキンの材質だけでなく、接続方式、使用圧力、使用温度、メーカー保証範囲、適用規格を確認することが重要です。水素対応をうたう製品であっても、すべての圧力・温度条件で使えるとは限らないため、採用時点でメーカーの最新仕様と適用条件を確認する必要があります。

 

まとめ

バルブは形・シート・流体で立体的に選ぶ

バルブは、配管径だけで選ぶものではありません。グローブ弁かゲート弁かといった形状、メタルシートかソフトシートかといったシート材質、さらに水素などの特殊ガスを扱う場合の流体特性を合わせて考える必要があります。

形・シート・流体条件を立体的に確認することで、漏れ・圧力損失・摩耗・温度条件の不一致などのリスクを抑えたバルブ選定につながります。

 

工業炉メーカー「サンファーネス」では、1,500台以上の工業炉製作で培ったノウハウで、お客様のご要望に合った熱処理炉のご提案をいたします。 技術的な相談も無料でお受けしますので、お気軽にご相談ください。

 

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著者 / サンファーネス編集部

1500台以上の工業炉の設計・製作を手掛け、自動車・鉄鋼・化学各種業界向けに展開。特定の炉に限定せず多品種の経験と実績を持つ。また、工業炉だけでなく付帯設備や搬送装置も含めてトータルでサポートし、仕様やニーズの異なる課題解決にも多数対応。

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