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08:気体の圧力と単位換算|【ゲージ圧・絶対圧】を取り違えると計算が狂う単位の鉄則

計算書どおりにならず、炉の挙動と合わない……というとき、原因は難しい熱力学ではなく、もっと手前の、単位の取り扱いと圧力の定義(ゲージ圧と絶対圧)にあることがよくあります。計算に使う数字が何を基準にしているかを押さえておかないと、その先の熱計算・流量計算にもずれが生じます。本記事では、気体を扱ううえで外せない単位換算の基本と取り違えが起きやすいゲージ圧・絶対圧の考え方を解説します。
熱計算の前提となる伝熱の基本については、工業炉の伝熱の基礎でも紹介しています。
力=N、圧力=Pa、熱量・エネルギー=J、仕事率=Wなどで表す
重力単位系(旧単位):kgf/cm²、kcal などで表す単位系のこと
古い図面や資料に残る場合があり、現在はSI単位への換算が基本になる
ゲージ圧:大気圧を0として測った圧力のこと
一般的な圧力計で表示される圧力で、記号Gを付けて表す場合がある
絶対圧:完全真空を0として測った圧力のこと
気体の状態方程式などで用いる圧力で、記号absを付けて表す場合がある
目次
1.単位の基本:SI単位と旧単位の混在で起きるありがちなミス
単位系が混在すると、計算結果もずれます
- 熱量:ジュール(J) ⇔ キロカロリー(kcal)
- 圧力:メガパスカル(MPa) ⇔ キログラム毎平方センチメートル(kgf/cm²)
ありがちなミスは、1つの式の中にSI単位と旧単位の数字をそのまま混ぜて計算してしまうことです。単位系が混在したままでは、式の次元がそろわず、計算結果を正しく評価できません。計算前にすべての数値をどちらかの単位系(基本はSI)に統一することが大前提です。
換算の目安は 1 kgf/cm² ≒ 0.0980665 MPa、1 kcal ≒ 4.186 kJ、1 kcal/h ≒ 1.163 W
現場資料の単位をまずSIに直してから検算すると安全です
人は毎日およそ1気圧、体全体で10トン近い空気に押されています
しかし、体の内側からも同じように押し返しているため、普段はその圧力を感じません
大気圧は目に見えませんが、ゲージ圧と絶対圧を考えるときの大きな基準になっています
2. 最大の落とし穴:ゲージ圧と絶対圧
混同すると計算結果に大きなずれが生じます

▲ ゲージ圧と絶対圧の関係(基準ゼロの違い)の概念図
① ゲージ圧(記号G)
- 定義:大気圧をゼロとして測った圧力
- 特徴:配管に付く圧力計(ブルドン管など)の目盛り。大気開放のときメーターは0を指す
- 表記例:0.2 MPaG、1.0 kgf/cm²G
② 絶対圧(記号abs)
- 定義:完全真空をゼロとして測った圧力。ボイル・シャルルの法則や気体の状態方程式など、気体の物理計算で用いる圧力
- 特徴:大気開放(ゲージ圧0)でも、地球上には大気の重さがあるため、絶対圧では約0.1013 MPa(1.033 kgf/cm²)かかっている
- 表記例:0.3013 MPa abs、2.033 kgf/cm² ab
実務で 0.1013 MPa(101.3 kPa)と丸めて使うこともありますが、計算精度に応じて桁数をそろえる必要があります
そんな場所で圧力を考えるとき、地球の大気圧を0にしたゲージ圧だけでは、実際の圧力の大きさが見えにくくなります
基準をどこに置くかが大事なのは、宇宙でも工場でも同じです
3. なぜ使い分けが必要なのか
実例:圧力を2倍にしたときの体積
大気圧下(0 MPaG)の 1 m³ の気体を、圧力計が 0.1 MPaG を示すまで加圧します。ゲージ圧のままボイルの法則(圧力と体積は反比例)を使うと、0での割り算になり計算できません。絶対圧に直します。
- 初期の絶対圧 :0 MPaG + 0.1013 MPa = 0.1013 MPa abs
- 加圧後の絶対圧:0.1 MPaG + 0.1013 MPa = 0.2013 MPa abs

▲ゲージ圧を絶対圧に直してボイルの法則を使う実例の概念図
絶対圧で見ると、0.1013→0.2013 でほぼ2倍。ボイルの法則から体積は半分(約0.5 m³)になる。と正しく導けます。状態方程式(PV=nRT)のPにゲージ圧を入れると、密度・体積比が実際とかけ離れ、ガス流量設計や配管径選定の誤りにつながります。
圧力を扱うときも、基準をどこに置くかで数値の意味が変わります
4.よくある質問
業界や用途によって答えが異なる場合もありますが、気体の圧力や単位換算を扱ううえで、よく確認されるポイントを紹介します。
Q1.圧力計が0 MPaを示しているのに、絶対圧では0ではないのはなぜですか
一般的な圧力計は、大気圧を0として表示するゲージ圧を示しています。配管や炉内を大気開放した状態では、圧力計は0 MPaGを示しますが、実際には大気圧がかかっているため、絶対圧では約0.1013 MPa absになります。状態方程式やボイル・シャルルの法則など、気体の物理計算では絶対圧を使うため、ゲージ圧の値に大気圧を足してから計算する必要があります。
Q2.MPaGとMPa absは、どのように使い分ければよいですか
現場の圧力計や設備仕様では、MPaGのようなゲージ圧が使われることが多くあります。一方、気体の体積変化、密度、流量換算などの計算では、完全真空を0とする絶対圧を使います。圧力値を見たときは、まずGなのかabsなのかを確認し、計算式に入れる前に必要な形へ換算することが大切です。表記がない場合は、図面や計算書の前提を確認しておく必要があります。
Q3.Nl/minやsccmなどのガス流量は、実際の流量とは違いますか
Nl/minやsccmは、基準となる温度・圧力に換算した流量を表す単位です。実際に配管内を流れている体積流量は、使用時の温度や圧力によって変わります。そのため、ガス流量を比較したり、配管径や供給量を検討したりする場合は、どの温度・圧力基準の流量なのかを確認する必要があります。圧力と同じように、流量も「何を基準にした値か」をそろえることが重要です。
5.まとめ
計算前の2大ルーティン
- すべての数値を書き出し、単位系(基本はSI)が統一されているか確認する
- 現場データがゲージ圧の場合は、大気圧を考慮して絶対圧に換算してから式に入れる
単位と基準のゼロを正しくそろえること。この基本確認が、設計値のずれや運転トラブルを防ぐ土台になります。
工業炉メーカー「サンファーネス」では、1,500台以上の工業炉製作で培ったノウハウで、お客様のご要望に合った熱処理炉のご提案をいたします。 技術的な相談も無料でお受けしますので、お気軽にご相談ください。
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