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04:工業炉における外皮放熱の計算実務|自然対流・放射の物理と、部位別・黒度別の計算手順

工業炉の断熱層における温度勾配計算では、熱貫流と外皮放熱が釣り合う点を反復収束計算によって求める考え方を紹介しました。本記事では、その釣り合いの放熱側にあたる外皮放熱、すなわち鉄皮表面から周囲へ逃げる熱についてです。
炉外面から周囲へ逃げる放熱量は、単純な一式だけでは求められません。炉のどの部位か(側壁・炉底・天井)で自然対流の強さが変わり、表面を何で仕上げているか(黒度・放射率)で放射量も大きく変わります。本記事では、外皮放熱の二大要素である自然対流と放射を計算式と数値例で解説します。

図1:外皮放熱は自然対流 Q_conv と放射 Q_rad の足し算。2つは別物の物理でどちらも温度に対して非線形に変化する
放射(輻射) :電磁波として熱を直接空間へ捨てること。空気の動きとは無関係
黒度(放射率)ε :表面の放射のしやすさ(0〜1)のこと。塗装・仕上げで決まる
Δt :鉄皮温度 Ts と周囲空気温度 Ta の差(Ts − Ta)のこと
目次
1. 外皮放熱を支配する2つの要素
2. 部位で変わる自然対流放熱(Q_conv)
- 炉天井(水平・上向き):hc = 2.8 × (Δt)^0.25 … 最も逃げやすい
- 側壁(垂直面) :hc = 2.2 × (Δt)^0.25 … 標準
- 炉底(水平・下向き) :hc = 1.5 × (Δt)^0.25 … 最も逃げにくい

図2:自然対流熱伝達率 hc=C×(Δt)^0.25。面の向きで係数Cが変わり、天井(2.8)>側壁(2.2)>炉底(1.5)の順に放熱しやすい
3. 黒度で変わる放射放熱(Q_rad)
- 一般塗装(カラーペイント等) :ε ≒ 0.9〜0.95(本例では0.94) … 熱を放射しやすい
- 耐熱アルミペイント(シルバー):ε = 0.74 … アルミ粉の効果で放射を抑える
- ステンレス(SUS)の輝面 :ε = 0.20 … 魔法瓶のように放射しにくい

図3:放射放熱は黒度εに比例。一般塗装(0.94)>アルミペイント(0.74)>SUS輝面(0.20)。SUS輝面は魔法瓶のように放射しにくく、鉄皮自体は熱くなる
4. 数値計算で放熱量の違いを見る
① 自然対流放熱(Q_conv)
(40)^0.25 ≒ 2.515 として、各部位の hc と放熱量(hc×40)は次のとおりです。
- 天井:hc=2.8×2.515=7.04 → Q_conv=7.04×40=281.6 kcal/m²h
- 側壁:hc=2.2×2.515=5.53 → Q_conv=5.53×40=221.2 kcal/m²h
- 炉底:hc=1.5×2.515=3.77 → Q_conv=3.77×40=150.8 kcal/m²h
② 放射放熱(Q_rad)
温度部分:[(333/100)⁴ − (293/100)⁴]=(122.96 − 73.70)=49.26。黒体基準の放射熱=4.88×49.26=240.4 kcal/m²h。これに黒度εを掛けます。
- 一般塗装(ε=0.94):240.4×0.94=226.0 kcal/m²h
- アルミペイント(ε=0.74):240.4×0.74=177.9 kcal/m²h
- SUS輝面(ε=20):240.4×0.20=48.1 kcal/m²h
③ 総合マトリクス(部位×仕上げ)

図4:部位×仕上げの総合放熱量マトリクス(Δt=40℃)。塗装の天井(507.6)とSUS輝面の炉底(198.9)で2.5倍以上の差
| 部位(対流の強さ) | 一般塗装 ε=0.94 |
アルミペイント ε=0.74 |
SUS輝面 ε=0.20 |
|---|---|---|---|
| 炉天井(最も放熱) | 507.6 kcal/m²h | 459.5 kcal/m²h | 329.7 kcal/m²h |
| 側壁(標準) | 447.2 kcal/m²h | 399.1 kcal/m²h | 269.3 kcal/m²h |
| 炉底(最も放熱しない) | 376.8 kcal/m²h | 328.7 kcal/m²h | 198.9 kcal/m²h |
ここまでの計算は、静止空気中での外皮放熱を前提にしています。雰囲気炉では、炉内ガスの種類によって断熱材の実効熱伝導率が変わるため、外皮放熱の検討とあわせて、雰囲気ガス中での熱伝導率補正も確認しておくことが大切です。
よくある質問
業界や用途によって答えが異なる場合もありますが、工業炉の外皮放熱計算や断熱設計にあたって、よく確認されるポイントを紹介します。
Q1. 外皮放熱は、自然対流だけで計算してもよいですか
外皮放熱は、自然対流と放射の合計で考える必要があります。自然対流は鉄皮表面で温められた空気が上昇して熱を運ぶ現象で、炉の部位によって放熱のしやすさが変わります。一方、放射は表面から電磁波として熱が放出される現象で、表面仕上げや黒度の影響を受けます。どちらか一方だけで計算すると、実際の放熱量とずれる場合があります。
Q2. 炉の部位によって、外皮放熱量はどのくらい変わりますか
同じ鉄皮温度であっても、天井・側壁・炉底では自然対流の強さが異なります。温まった空気は上昇するため、一般に天井は熱が逃げやすく、炉底は熱が逃げにくくなります。そのため、同じ断熱構成でも、炉底側では鉄皮温度が高くなりやすい場合があります。断熱設計では、炉全体を一律に見るのではなく、部位ごとに放熱条件を確認することが大切です。
Q3. アルミペイントやSUS輝面にすると、鉄皮温度は下がりますか
必ずしも下がるとは限りません。アルミペイントやSUS輝面のように黒度が低い表面は、放射による放熱量が小さくなります。見た目には熱を反射しそうに見えますが、外皮から熱を捨てにくくなるため、同じ断熱厚みでは鉄皮温度が高めになる場合があります。低放射率の外皮を使う場合は、断熱性能だけでなく、表面温度ややけど防止の安全対策もあわせて確認する必要があります。
まとめ
放熱計算を押さえることが断熱設計につながる
- 同じ鉄皮温度60℃でも、一般塗装の天井(507.6)とSUS輝面の炉底(198.9)では放熱能力に2.5倍以上の差が生じる
- アルミペイント(74)は一般塗装(0.94)より放射を抑えるため、同じ断熱厚みなら鉄皮温度は高めになる(内部に熱がこもる)
- SUS輝面は放射が激減して保温効果が高い反面、鉄皮自体は熱くなるため、やけど防止の安全対策が必要
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