溶解とは?金属のさまざまな溶解技術と溶解炉について詳しく解説

溶解とは?金属のさまざまな溶解技術と溶解炉について詳しく解説

溶解は金属加工の最初の工程として長い歴史を持つ技術で、人類が紀元前から技術を磨いてきた分野です。 金属の溶解にはさまざまな方法があり、現代では効率的な溶解法とそれに使用する溶解炉が工業的に使用されています。 今回の記事では金属の溶解についての基本および溶解を行うための溶解炉について紹介します。

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溶解とは

溶解とは金属の場合には固体の金属を液体に変化させる方法のことで、金属の溶融点以上に加熱することによって相変化が起こります。

溶解という言葉にはいくつかの意味があり、例えば食塩を水に溶かして溶液を作ることも溶解と呼びます。 金属の場合には加熱して液体にすることを指し、他の名称として溶融や融解と呼ぶこともあります。 金属は材料によって液体になる温度「融点」に違いがあり、鉄系の金属材料は約1500℃以上で液体に変化します。 軽金属であるアルミニウムは融点約660℃、銅系金属では融点約1000℃強となっており、それぞれ含有する物質によっても融点は変化します。

金属を溶解させるためにはそれぞれの溶融点以上の温度を発生させる設備が必要であり、溶解専用の炉が用いられます。 溶解炉には溶かす金属の種類や用途によってさまざまな設備がありますが、工業的な用途の溶解炉は大量の金属を効率的に溶融できるように進化してきました。

金属の扱い方は、長い歴史の中で絶えず進化してきました。溶解技術にもさまざまな技術革新があり、より高温で効率よく溶解を行う炉も登場しています。 その中で、金属の溶解炉も技術の進化とともに変わり続けています。

溶解炉における燃焼炉と電気炉の違い

溶解炉は熱源の違いによって大きく2種類に分けることができ、燃焼炉と電気炉があります。

燃焼炉は溶解に必要な熱量をさまざまな燃料の燃焼によって確保する方式です。 木材や木炭から始まり、バーナの燃焼ガスで直接被加熱物を加熱する直火式、ラジアントチューブやマッフル等を用いて燃焼し、燃焼熱が隔壁を通じて被加熱物に伝導される間接式、加熱した雰囲気ガスを炉内の被加熱物に向けて流すガス循環加熱式、噴流加熱式などの種類があります。 さまざまな燃料を使用できるメリットはありますが、一方でCO2など地球温暖化ガスの発生を伴います。

電気炉は溶解に必要な熱量を電気によって発生させる方式です。 電気炉の熱源にもいくつかの方式があり、最もオーソドックなのは抵抗体による発熱を熱源とする電気抵抗式です。 電気炉はエネルギー源が電気なのでさまざまな発電方式からエネルギーを供給できるフレキシブルな点がメリットです。 発電方式によってはカーボンニュートラルをある程度進めることもでき、燃焼炉に必要な排気ガスの処理設備なども不要なためコンパクトにすることが可能です。

燃焼炉、電気炉にはそれぞれに多くの方式がありますので、おもな種類を紹介します。

燃焼式溶解炉の種類

燃焼式溶解炉には代表的なものとして以下の種類があります。

種類 特徴
高炉 高さを持たせた炉内にコークスと原料を投入して溶解する
反射炉 炉内の放射熱を利用して溶解する
キュポラ シャフト部分にコークスと原料を投入して溶解する
転炉 高炉等で溶解した銑鉄から不純物を取り除く精錬用炉

燃焼式溶解炉の種類 燃焼式溶解炉の種類

高炉

高炉は炉頂から装置を使って鉄鉱石、コークス、石灰石を装入、下部羽口から熱風を送り、鉄鉱石を還元溶解して銑鉄を作る炉で、溶鉱炉ともいいます。 燃料は木炭から石炭やコークスへと変化し、それに伴ってより高温を発生できるようになったため、大幅に鉄の生産量が向上して産業革命の礎となっています。

反射炉

反射炉はバーナなどの熱源で発生した熱線と燃焼ガスが溶解炉に伝達され、溶解炉内の天井や壁面で反射して放射伝達させ、炉床の被加熱物を加熱、溶融する炉です。 実際には炉の天井や壁面に吸収された熱が放射伝熱によって炉床に伝わっており、効率的に高品質の銑鉄を生産できるため、一般金属や合金の溶解精錬用に多く活用されています。 処理温度、処理容量も幅広く対応することが可能なため、金属、ガラス、窯業、化学など幅広い分野で用いられています。

キュポラ

キュポラは高炉の発展系といえる背の高い構造の炉で、溶銑炉ともいいます。 高炉と同じく原料の鉱石とコークスを交互に積み重ねて銑鉄、鉄くずを溶解します。操業中にも原料を投入できる構造を持つため、連続的に大量の溶湯を溶解できる効率的な炉です。 連続的に溶湯を供給できるため大規模操業に向いており、鋳物の大量生産にはかかせません。 またコークスによる炭素成分の補給ができる点や、不純物を精錬する作用もあるため高品質の溶鉄を得ることができます。 キュポラは大規模操業に必要な機能を持つためかつては溶解炉の主流でしたが、昨今ではCO2の排出を抑えるなど環境対策から電気炉への移行を視野に入れる企業が増えてきています。

転炉

転炉は製鋼炉の一種で、成分調整をメインに行う精錬用の炉です。 高炉やキュポラなどで溶解された一次銑鉄を転炉に移して鋼鉄などを精錬します。 耐火物を内張りした炉内で支持軸に回転機能を取り付けた構造です。炉内では溶鉄に酸化性ガスを吹き入れて炭素や不純物の除去などを行います。転炉は他の製鋼炉に比べて精錬時間が短く、生産性が良いとされています。

電気式溶解炉の種類

電気炉は電気をエネルギー源とする点では共通ですが、発熱の構造によって分類されています。

種類 特徴
抵抗炉 電流のジュール効果に基づいた発熱を熱源として溶解する
誘導溶解炉 電磁誘導によって原料内部に渦電流を発生させて発熱、溶解する
アーク炉 高電圧のアーク放電によって得られるアーク熱で溶解する

電気式溶解炉の種類 電気式溶解炉の種類

抵抗炉

抵抗加熱炉は抵抗体自身の電気抵抗で発熱する構造で、直接加熱方式と関節加熱方式があります。 直接加熱方式は被加熱物に電極を直接取り付けて通電させ、被加熱物自身の電気抵抗によって溶解させる方法で、間接加熱方式は発熱体から出る熱を被加熱物に伝える、間接的に炉全体を加熱することで溶解させる方式です。 間接加熱方式の発熱体は金属、非金属と種類もさまざまです。 抵抗加熱炉は精密な温度制御が可能ということや温度の幅も広く、真空炉でも使用できます。

誘導溶解炉

誘導炉は電磁誘導による加熱を行う炉で、被加熱物自身が発熱体となります。 電磁誘導はコイルに電流を流すことで磁力線が発生しますが、その磁力線を金属に流すことで渦電流が発生し電気抵抗のジュール熱が生まれます。 被加熱物には磁力線のみしか影響しないため、密閉状態の炉内でも溶解が可能で品質の良い溶湯を得ることができます。 また誘導電流の強さで発生する熱量を高められるため、電極などの耐熱温度に関係せずに高温を得られるのも特徴です。

アーク炉

アーク炉は電極間または電極と被加熱物との間に発生させるアーク放電によって溶解する炉です。 アーク放電によって瞬時に金属を溶解させる熱量が連続的に得られ、電流の強さによって温度をコントロールしやすい点も特徴です。 またアーク炉には間接加熱式もあり、こちらは電極間に発生したアーク放電の熱で炉全体を加熱し、間接的に溶解を行う方式です。

特殊な溶解炉

溶解炉には特殊な機能を持つタイプがあり、ここでは代表的な溶解炉を紹介します。

種類 特徴
真空溶解炉 真空の密閉炉内で溶解可能な炉
プラズマアーク溶解炉 プラズマ放電を熱源とする溶解炉
電子ビーム溶解炉 電子ビームを熱源とする溶解炉

真空溶解炉

真空溶解炉は空気および酸素を遮断した真空雰囲気内で溶解できる炉で、酸化などの影響を受けない溶湯が得られます。 真空溶解炉では発熱体が直接的に干渉しない方式が必要で、誘導炉が主に使用されます。 ステンレス鋼や高合金鋼の脱ガスや脱炭、アルミニウム、銅合金の脱ガス、チタン合金の溶解などに用いられます。 真空溶解炉では炉内を真空にしたあとに不活性ガスを注入し、不活性ガス雰囲気内で溶解することも可能です。

プラズマアーク溶解炉

プラズマ溶解炉は不活性ガスのプラズマを熱源とした溶解炉で、プラズマアークによって数万度の高温で指向性のよい安定なアークが発生できます。アークが安定していることにより、電力系や電波系への師匠、騒音やダストの発生も少ない利点があります。 アーク炉は大気中の放電によるアーク放電で3000℃程度を得られますが、より絶縁抵抗の高いアルゴン等の不活性ガス内で放電させることで大幅に温度が高まります。 鉄系金属より融点の高い金属の溶解や各種合金の溶解に使用されます。

電子ビーム溶解炉

電子ビーム溶解炉は加速した電子ビームを被加熱物に直接照射することで溶解する方式で、高真空容器で溶解しつつ、その中に設けた水冷銅るつぼで冷却して高純度のインゴットとして取り出す装置です。 プラズマ溶解炉よりさらに高い温度を得ることができます。 電子ビームは電子自体を高い電圧で加速することでビーム状にしたもので、電子ビーム自体の高エネルギーで高融点金属、高活性金属、希少金属などの高純度精製に用いられることが多いです。

よくある質問

Q.燃焼炉から電気炉への置き換えが進んでいるのはなぜですか?

おもに環境対策によるもので、コークスを燃料とする高炉やキュポラ稼働時に発生するCO2や、ばい煙が環境負荷物質になります。 電気炉は炉自体の稼働時にこれらの有害物質が発生しないため、電気炉への置き換えが進んでいます。

Q.溶解炉ではどんな金属を溶解できますか?

溶解炉では鉄系金属をはじめとして、融点の低いアルミニウムなどの軽金属、重金属の金・銀・銅や融点の高いチタニウム等の金属まで溶解可能です。 原料の融点に合わせて溶解炉の種類を選定し、温度のコントロールによって各種合金を生成することも可能です。

まとめ

溶解炉は各種金属の溶解を専門とする設備で、金属材料の生成、精錬には欠かせません。 溶解炉は人類が金属を扱い始めた紀元前から現代までの長い歴史を持っており、鉄をはじめとしてより高い融点の金属まで扱えるほど進化しています。

工業炉メーカー「サンファーネス」では、1,500台以上の工業炉製作で培ったノウハウで、お客様のご要望に合った熱処理炉のご提案をいたします。 技術的な相談も無料でお受けしますので、お気軽にご相談ください。

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著者 / サンファーネス編集部

1500台以上の工業炉の設計・製作を手掛け、自動車・鉄鋼・化学各種業界向けに展開。特定の炉に限定せず多品種の経験と実績を持つ。また、工業炉だけでなく付帯設備や搬送装置も含めてトータルでサポートし、仕様やニーズの異なる課題解決にも多数対応。

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