ロータリーキルン炉とは?構造や設計、温度別の用途をわかりやすく解説

「自社の熱処理炉だと、処理後に焼きムラが起きて困っている。」
「ロータリーキルンを導入したいけれど、どのような特徴があるのか知りたい。」
近年、スマートフォンや電気自動車の普及拡大に伴ってこんな悩みや疑問を持っているエンジニアの方が多くいらっしゃると思います。
ロータリーキルンは粉体材料の熱処理炉で、製造業向けの鉄や亜鉛などの金属材料といった幅広い分野で利用されています。
一般的な熱処理炉に比べて焼きムラが少ない、製造工程の省力化が可能などのメリットがあります。
この記事ではロータリーキルンの基本的な構造や特徴、種類、活用事例などをわかりやすく解説します。

ロータリーキルンとは?

ロータリーキルンとは金属、セラミックスなど粉体物質を、独自の攪拌機構と高温熱源を用いて焼成処理する炉のことです。
キルンとは陶磁器やセメントの焼成に用いられる「窯」を意味していて、回転機構をもった窯をロータリーキルンと呼びます。
ロータリーキルンは原料投入口から排出口に向かって下りの傾斜がつけられています。
ロータリーキルンが駆動装置によって回転運動をすると、投入された粉体材料は傾斜を伝って、投入口から排出口まで搬送装置を使わずに徐々に移動していきます。
粉体材料は回転運動により攪拌され、その間にバーナーやヒーターなどで均一な焼成処理が行われます。
連続式ロータリーキルンは静置型の熱処理炉に比べて、連続供給排出が可能で炉内でのキープ時間を高精度で制御することが可能です。
加えて温度や雰囲気制御、レトルト材質の選定などで原材料に合った熱処理条件を作り出すことが可能な装置です。

ロータリーキルン、シャトルキルンとの違い

ロータリーキルンとシャトルキルンの大きな違いは、材料の搬送方法です。
シャトルキルンは台車などの搬送装置に、材料をのせて炉内を移動させて焼成を行います。そして炉体には台車が出入りするための扉を有しています。 一方で、ロータリーキルンには扉はありません。
投入口から材料を直接投入すると、回転運動で自動的に炉内を移動して排出口まで到達します。
シャトルキルンの台車には熱量の小さいセラミックファイバーを使用して、加熱時間を短縮して焼成工程を短くするように工夫しますが、ロータリーキルンと違って台車を加熱するために使われるエネルギーがロスとなってしまいます。

  ロータリーキルン シャトルキルン
材料の搬送方法 レトルトの回転運動 専用台車の移動
設備扉の有無
エネルギーロス
設備スペース
生産能力

ロータリーキルン炉の原理や構造

基本構造と仕組み

連続式ロータリーキルンの基本的な構造と仕組みについて説明します。
まずメインとなるのは傾斜のついた炉芯管でレトルトやマッフルとも呼ばれます。
レトルトの内部で金属やプラスチック、木くずや汚泥などの材料を攪拌・流動させながら加熱していきます。
加熱方法はレトルトの外部からヒーターなどで間接的に加熱する電気式や、内部で直接バーナーを燃焼させて加熱する燃焼式があります。
レトルト内で加熱された材料は、排出されてロータリークーラーで冷却処理されます。
ロータリークーラーの基本的な仕組みは、ロータリーキルンと同様で、回転する炉芯管の中を移動する間に、材料が冷却材によって間接的に冷やされます。

構成物 特徴 使用目的
レトルト 回転機構・傾斜を持った筒状の容器 被加熱物を攪拌・移動させる
加熱装置 ヒーターまたはバーナー 被加熱物を加熱する
雰囲気ガス 窒素・アルゴン・水素などの気体 被加熱物の保護や品質の改善
冷却装置 水冷・空冷など 被加熱物を冷却する

ロータリーキルン炉のメイン部品であるレトルトは耐熱合金製の部品です。
ロータリーキルン全体が傾いていて、レトルトの回転によってロータリーキルンが回転すると、原料が自動的に移動する仕組みになっています。

ロータリーキルンの加熱方式

電気加熱式ロータリーキルン

加熱源にヒーターを用いたロータリーキルンです。
処理する雰囲気ガスには窒素、水素、アルゴンなどを使用します。
ヒーターを使うことで温度制御がしやすい特徴があります。

ガス加熱式ロータリーキルン

加熱源にガスバーナーを用いたロータリーキルンです。
燃料は重油や灯油などの液体燃料や、都市ガスLPGなどの気体燃料が使用されます。

バッチ型と連続式の違い

ロータリーキルンは生産方式によって、大きく2つのタイプに分けられます。

バッチ型
バッチ型は加熱物を投入して処理が完了したら取り出して、また次の加熱物を投入するという流れで使用します。

連続式
炉内の温度を常に高温に保ち続けて、連続的に材料投入を行い焼却処理します。
そのため材料投入口と排出口が分かれています。
熱処理炉ではベルトコンベアなどを使用して、材料投入口から排出口まで一定のスピードで移動する間に処理が完了しますが、ロータリーキルンでは搬送装置を使わずにレトルトの回転によって、材料が排出口まで移動していきます。

  バッチ型 連続式
処理量 多品種少量向き 少品種多量向き
処理能力
処理時間 長時間向き 短時間向き

温度別の用途例

ロータリーキルンでは処理する材料によって使用温度が変わります。
以下に温度別の使用例を紹介いたします。

使用温度500℃の用途例

  • 泥の乾燥:泥を乾燥させて肥料を作成する
  • カーボン粉末の乾燥:不純物を取り除いてカーボン粉末を回収する
  • 樹脂粉末の焼成:機能性を持たせるために加熱処理する
  • 乾燥材粉末の水分除去:わずかな水分を再処理して除去する

使用温度500~800℃の用途例

  • 鉄粉の焼きなまし

使用温度800~1100℃の用途例

  • 金属粉末の水素還元・焼きなまし

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ロータリーキルンでよくある質問

最後に、ロータリーキルンについてよくある質問事項を解説いたします。

ロータリーキルンで被加熱物の出来ばえを確認したいのですが、試験することは可能ですか?

弊社設備で対応可能です。 事前に試験内容を詳しくヒアリングさせていただき、弊社の設備で対応可能かどうか確認をさせていただきます。 お気軽にご相談ください。

静置炉と比べて何が違いますか?

静置炉の場合、台車内に重ねた材料の表面に露出している部分と、内部に入り込んでいる部分では均一な温度になりにくく、焼きムラが発生することがあります。
その点、ロータリーキルンではレトルトが回転して材料が攪拌されるので、材料が均一に焼成されるので焼きムラが発生しません。

金属材料を窒化させずに処理することは可能ですか?

可能です。
炉内にアルゴンを充填して処理することで、金属の窒化を防止できます。
雰囲気ガスを使用する場合は、ガス漏れを防止するため特殊なシール構造を用います。

まとめ

ロータリーキルン炉の特徴や構造や種類、用途例などについて解説してきました。
ロータリーキルン炉は駆動装置で回転するレトルトを使用して、粉体材料を均一に熱処理できる特徴があります。
シャトルキルンと違って台車を加熱する必要が無いため、エネルギーロスが少なくできるメリットがあります。
バッチ型と連続式の2種類の生産方法に対応していて、生産量や設置スペースなどを加味して選択する必要があります。
設備導入後は処理する材料によって、必要な温度条件を見極めて焼きムラなく焼成できる条件を設定します。

ロータリーキルンメーカーのサンファーネスでは、水素100%にも対応出来る製品の取扱いや処理量の増加に伴うバッチ型から連続式への計画も可能です。工業炉を1500台以上製造して培った技術とノウハウで、お客様の用途に合わせたロータリーキルンをオーダーメイドで提供いたします。ぜひご相談ください。
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sunfa
著者 / サンファーネス編集部

1500台以上の工業炉の設計・製作を手掛け、自動車・鉄鋼・化学各種業界向けに展開。特定の炉に限定せず多品種の経験と実績を持つ。また、工業炉だけでなく付帯設備や搬送装置も含めてトータルでサポートし、仕様やニーズの異なる課題解決にも多数対応。